ぴこのねごと

さあ、つかの間の現実逃避へ。 旅とフラと時々経理の話

フィンランド イナリ 白い静寂と生きとし生きるもの Day5

朝起きたらさらっさらの雪が降ってる。今日の天気予報は一日雪予報。

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今日の夜のオーロラは、絶望的だ。春の気候は不安定で、この先1週間も良い天気の日がないし、kp値も低いから明日帰国の途につくとしても残念な感じはない。1週間滞在を延長したとしても、オーロラを見る可能性がとても低いだろう。

 

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気持ちを切り替えて、朝ごはんを食し、唯一申し込んだオプショナルツアー「トナカイのそりに乗るツアー」に参加する。

 

ツアー会社まで車で乗せられ、防寒着のつなぎを着せられる。もっこもこだ。今日はマイナス6度、そこそこ寒い。もこもこ装備をさせられた一行は、再び車に乗せられSIIDAの更に先の何もない森の中に下ろされた。そこにいたのは、ソリを引いた可愛いトナカイたちとサーミの伝統装束を着たお兄さんだ。

 

ここから2人ずつソリに乗って、森を進むのだ。

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お兄さん《手綱》トナカイ《ロープ》ソリ《ロープ》トナカイ《ロープ》ソリ《ロープ》トナカイ《ロープ》ソリと電池の直列つなぎの様にトナカイとソリが連なっており、参加者各々がソリに座る。かけられた防寒具はトナカイの毛皮と毛布だ。暖かいが、同胞の毛皮をソリを引いているトナカイたちはどう認識しているのだろうか。トナカイ語が分かる設定が私に無くてよかった。

 

しかしこのようなソリのつなぎ方で、果たしてこのつながったソリはうまく進むのか心配になる。途中に配置されているトナカイが動かなければ、前にいるトナカイがその分も引っ張らないとならないし、動かないのではないか。

 

結論から言えばそれは全くの杞憂だった。トナカイたちは「やり方はできている」と暗チのリゾットばりにいい仕事をした。昔、サーミが移動していた時には、このソリで人と荷物を引っ張ったのだ。私なんかが心配するのは全くお門違いだった。

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可愛いおしりは、もふもふしているように見える。

 

小雪舞う森の中を進む。気がつくと、こんなに寒くて雪深いのに、鳥たちがピチピチと鳴いている。サラサラの雪が流れていく。

 

もっとサンタさんのソリや犬ぞりレースの如くにすごい速さで森を駆け抜けるかと思いきや、歩きのお兄さんに引っ張られてトナカイたちは歩く。ソリの速さも13分/kmといった速さにしかならない。

 

途中でトナカイがコロコロとした茶色の球形を尻尾の下から産んだり、枝や雪を拾い食いしたり。平和だ。

 

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広い場所に出ると焚き火を囲んでティータイムだ。お兄さんがサーミやトナカイについての話をしてくれる。今はトナカイで移動して生活するサーミはおらず、トナカイを飼いながら一か所に留まって住んでいる。

野生のトナカイは少なくほぼ誰かに飼われているらしい。

トナカイはこの厳しい気候の中で生きているので何でも食べる。葉、雪や木の枝、栄養がありそうなものは何でも。確かにここに来る途中、ソリを引きながら、雪の中に口を突っ込んでもぐもぐしていた。水分補給かと思ったが、どうやらお食事だったようだ。

 

そんな話を聞いていると、遠くからやってきた。

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野良トナカイ。
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飼われている子らを威嚇したり、お兄さんにクッキーをねだったり。この子は飼われている子ではないらしい。耳にタグが付いていたので、国で管理しているのかもしれない。

 

野生のトナカイは寿命が短いそうだ。ソリを引いていた子たちと比べてもとても痩せている。この寒い場所で暮らすことの厳しさを感じる。

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威嚇されて興奮しちゃった子を慰めるお兄さんと野良トナカイのお尻。

 

トナカイはサーミにとって、食料になったり、移動手段だったり、防寒具になったりとなくてはならない存在だ。トナカイとともにこの極寒の北極の地に生きていく。オーロラがはためく夜の雪原をヨークを歌いながら、一人トナカイのソリで走るサーミのイメージが浮かぶ。

 

東京で生きていると本当に自然とともに生きていることを忘れるなぁと思う。

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どこのドワーフだというほどの着膨れ。このツノの子は撮影用だとお兄さんは言っていたが、みんな可愛いぞ。

 

ツアーに参加している人たちもとてもいい人たちだった。ティータイム中も、みんなトナカイの健気な可愛さとこの雪の世界の静かさにリラックスしているかのようだ。写真を撮ったり、話したり。

 

帰りものんびりとソリに乗り、終わりつつある旅をさみしく思うけれど、良い時間を過ごせた心はほくほくと温かい。

 

心が穏やかだと言うことは、人を人たらしめる一つの要因なのかもしれない。心が満たされた穏やかな状態を幸せというのだろう。幸せは人の行動を支配する。不幸せも同じだ。

 

出発する前は、アジア人が暴力をふるわれたり、差別的な発言をされるというニュースに怯えていたが、この5日間全く嫌な思いはすることは無かった。単にほとんど人と合わなかったからかもしれないけれど。

 

日本にいてもどこにいても差別に合うし、避けられないならどういう対応をするか常に考えておく必要がある。アドリブがきかない私の場合は特にだ。恐れて行動できないのは勿体無いことだとも思う。自分が自分である人生はこの一度だけなのだ。

 

心穏やかに、冷静に判断できる自分でありたい。

 

翌日、9時のフライトに乗るために、朝早く起きる。雲の合間に太陽の光が見えて、オーロラみたいだった。

 

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イヴァロ空港まで送ってくれたシャトルバスの運転手のおっちゃんが、バスを降りるときに、

「See you next winter!」

と言ってくれた。

 

トゥンク…とはならなかったが、キュンとしてしまった。そうだ、こっちのおっちゃんは可愛いのだ。

 

またここに来よう、いつかの冬に。

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ヴァンター空港のムーミンカフェ。可愛かった。

 

 

ここまでお読みくださり、有難うございます。

皆さまご自愛下さいませ。よい週末をお過ごし下さい。