映画「サウナのあるところ」感想 そこには人が集まり、それぞれの物語が交差する
サウナはに入るのは好きだ。
だが、サウナに関する俺哲学やどこに何回行ったか等をあーだこーだと語るのも聞くのも苦手。映画が公開されるのは知っていたが、観るかどうか悩んでいた。
しかし予告編を見て、心は決まった。この映画は、私の苦手なものを題材にしているものではないと確信した。久々にフィンランドサウナの蒸気が上がる音が耳の奥に聞こえた気がする。
映画『サウナのあるところ』予告編(2019年9月14日より公開)
アップリンク渋谷は、とてもこじんまりとした映画館で驚いた。
おっちゃん(多分自分より若い人もいる)の一糸まとわぬ姿メガ盛りでちょっと刺激が強かったが、サウナの空間で弱音や辛さをもらすおっちゃんたちの姿にキュンとした。
そうだった。フィンランドのおっちゃんたちは、可愛いのだ。
話をしながら泣けてきてしまうおっちゃん、それを見て、「蒸気を足そうか」とロウリュするおっちゃん。サウナの蒸気は優しさでできているに違いない。
自分の身の上を泣きながら話すおっちゃん、静かに聞くおっちゃん。その後「話すべきじゃなかったかな」と言うおっちゃん、「話していいさ」というおっちゃん。サウナだからこそ語れる話があるのかもしれない。
保護された子を預かったおっちゃんは言う。
「その時から俺の息子になった」と。その後大きくなった「息子」とおっちゃんのアップが映る。このシーンが一番キュンとした。そして「"彼"とサウナに入ったのかーい」と一人突っ込んだ。
サウナでのおばちゃんたちの会話が好きなのはこう言う所だ。何気なかったり、深刻な話が展開されたり、たまに会話に巻き込まれてどぎまぎしたりするのが水風呂の次に好きだ。
それにしてもサウナストーブさえあればどこでもサウナになるのだろうか。車や公衆電話、テント等色々なサウナが出てきて興味深かった。ヘルシンキで観覧車のサウナを見た時には驚いたが、それ以上だった。是非映画を観てその発想を楽しんでもらいたい。
作中でのおっちゃんたちの会話は、かなり深刻で重い話が多かったが、監督によれば
決してフィンランド人のメランコリックさを書きたかったわけではないし、サウナがそういうシリアスな場だ、というイメージ作りをしたかったわけでもない。=中略= 本音を打ち明けられると、こんなにも楽になれるし素敵なことだよと感じてもらえたら嬉しいです
という意図で作品は作られたそうだ。
フィンランドのサウナがどういう雰囲気なのかよく分かるので、行ってみたいけど心配な人は観ると参考になるかもしれない。男子サウナだけであるのが残念ではあるが、充分サウナを目で楽しめる。
フィンランドサウナが好きな人は、またフィンランドにサウナに入りに行きたくなるだろう。私は鑑賞後、来年のゴールデンウィークの予定や休めそうなスケジュールを確認してしまった。
途中、ヘルシンキにあるサウナが出ていたが、確かに私にはハードルが高いなとよく分かった。後、おっちゃんたちの笑い声がすごかったな…。居酒屋か。道端で外気浴をするタイプのサウナは、今後のチャレンジだろう。
色々な人生があり、ままならない思いを抱いて生きていく。心が空っぽになって、もう動けないとなった時に、充電できるような場所、彼らのサウナの様な場所があるといいよね。
翌日のサウナは、日本のバリバリの電気サウナ&20度の水風呂だったが、脳内補正によりクーシャルヴィのスモークサウナとキーンと冷たい湖に入った気分になった。
今週も気分転換しながら、何とかサバイヴしていきましょう!