ぴこのねごと

さあ、つかの間の現実逃避へ。 旅とフラと時々経理の話

初めての鹿児島 高千穂峰 天の逆鉾

天孫降臨の地」と聞くと、宮崎県の高千穂を思い出す人が多いかもしれない。

 

旅行パンフレット載っている、高千穂峡の川、真名井の滝、ボートのコンボは九州方面の旅行パンフレットを見る際には必ずある写真だと思う。何やら夜神楽があったり、天岩戸神社があったり、神話の世界観と自然を楽しめそうだ。

 

しかし、ジュリアスにはクラヴィスがいるように、ジョジョにはディオがいるように、高千穂には天孫降臨の地を取り合うライバルがいる。

 

鹿児島県にある高千穂峰(たかちほのみね)だ。

 

高千穂峰は、宮崎県の高千穂と比べて旅行パンフレットにはほとんど載っていない。普通の旅行先としては少し交通が不便なのと地味、そして霧島山のうちのいくつか山に噴火の可能性があるからかもしれない。

 

派手さはないのだが、勇者ヨシヒコかアーサー王エクスカリバーかと言うような剣、天の逆鉾(あまのさかほこ)が山頂にささっており、何とも神秘的だ。現在刺さっているのはレプリカで、本物は山に埋もれているということだ。かつて坂本龍馬がこの剣を抜いたというエピソードもあり、かなり気になる場所だ。

 

霧島市のホームページによれば、天の逆鉾とは、神々が落とした鉾だそう。

はるか昔、神々がこの世を治めていたという神話の時代がありました。神々が天上界の天の浮橋から下の世界をのぞくと、霧にけむる海のなかに島のようにみえるものがあります。神々は一本の鉾を取り出し、その島にしるしをつけました。それが霧島山の名の由来だといわれています。その時、神々が逆さに落とした鉾は、見事に山の絶頂に突き刺さりました。今も高千穂の山頂に残る天の逆鉾は、その時の鉾だといわれています。

 

鹿児島県霧島市|天孫降臨神話

  

出発前の天気予報は、曇りと雨。天の逆鉾を見るためには、登山する必要がある。その為、雨が降る可能性があったら行くのを止めようと思っていたが、この鹿児島行きを逃したら、高千穂峰に登る日はそうそう来ないだろう。何故なら、登山である上にスタート地点までと帰りの車の運転が必要なのである。

 

体力の衰えを日々感じているデスクワーカーのこの私が、山を登り更に空港までの帰り道を慣れない山道を運転する事は、かなりハードルが高く感じた。行くならかつて剣道、トライアスロンなどで鍛えていた同行者がいる今しかない。運転も慣れている。彼女も体力が衰えたと言っているが、それでも私の1000倍はHPはあるだろう。迷いを振り払い、晴れ女の自分を信じて、登山靴とレインコート、ウェアをカバンに詰めた。

 

 

鹿児島滞在2日目、明日の天気予報は、曇り。雨マークが消えた。これなら行けるかもと水分と食料を購入し、山登りの準備をして早めに就寝した。

 

3日目朝、天気は曇り。雨は降っていない。友達の子どもを保育園にともに送り、いざ出発。泊まらせてもらっている友達の家は国分にあるため、そこからまずは霧島神宮方面を目指す。

 

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霧島神宮への道は意外と山道で驚いた。途中車がすれ違えないくらいの狭い道幅の場所もあったが、酷道ヨサク(国道439号)を去年経験した友には、鼻歌交じりの道に違いない。感謝。

 

山道ではラジオから光GENJIの「スターライト」がかかる。アラフォーの二人が熱唱する。

 

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高千穂峰まで


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8:30 高千穂河原ビジターセンターに到着。ここにはレプリカの天の逆鉾が頂上の写真とともに展示されている。頂上まで行けなかった人用に作成されているそう。一通り山道の説明を受け、入山届を出しトイレを済ませた。

 

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 8:50、出発。6月のこの時期は、土曜日にも関わらずとても空いていた。ビジターセンターの人によればミヤマキリシマが咲く時期には、この時間は既に人がいっぱいで駐車場にも入れないそう。

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 9:00、入口から少し歩くと、霧島神宮古宮社に到着。1235年の噴火で焼失してしまっている。2代目の霧島神宮の社殿がここにあった。現在の霧島神宮は、1484年になって今の場所に移されたそうだ。

 

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山道へ入っていく。しばらくの間は、木々の間の階段を上る。途中ソロ登山のおじちゃんが、美味しいから食べろとイチゴ?をもぎってくれた。恐る恐る食べた。甘酸っぱい。

 

 

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9:20、砂利道が始まる。地面は土ではなく、小石だ。専門的な名前は分からない。岩場まではこの砂利道が続く。踏み込んでも足が砂利に沈み込み、踏ん張れない。足の力が50%くらいしか使えてないような気がしてくる。第一の山、お鉢火山が遠くに見えてくる。


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緩やかな砂利道が終わると、岩場が現れる。ビジターセンターの人は、黄色い目印がある岩を登っていきなさいと教えてくれた。一見、歩きやすそうな砂利道があるのだが、小石が滑るので、下りのエスカレーターを逆走で登る様な状態になってしまうらしい。そのうち心が折れて、ビジターセンターのレプリカを見に来るそうだ。砂利道を登っているカップルがいるが、大丈夫だろうか。

 

初心者は、素直に黄色の印に沿って岩場を登っていく。急斜面に体の前面を預けるように登る。落ちそうで、後ろを振り向けない。振り向いたらたくさんの手に引っ張られて、どこかへ引き込まれてしまいそうだ。

 

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9:55、岩場を登りきると噴火口が見えるお鉢火山に辿り着いた。ほのかに硫黄の匂いがする。今、噴火されたら完全に天に召される。少し怖い。


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 お鉢火山から第二の山、高千穂峰が見える。

 

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10:15、お鉢を過ぎると、霧島神宮元宮に到着。788年の噴火で焼失してしまったそうだ。先ほど噴火口を見ているので、噴火したらもちろん燃えるよねと言う感じ。それにしても平安時代から噴火があり、この場所に神社を建てていたとは。このあたりの火山活動の長さを肌で感じて怖くなる。昔の人も同じように感じたからこそ、ここに神社を建てたのかなと思うと、人間は根本的な部分は何も変わっていないなと思う。

 

前方に見えるのが高千穂峰だ。

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雲行きがだいぶ怪しいが、急ぐことは難しい。クエン酸入りのゼリー飲料を体に叩き込み、急速回復を促す。

 

トレランの練習をしているのか、ランニングスタイルのお兄さんが、軽々と私たちの横を走り抜けて行く。タンクトップと短パンの後ろ姿がみるみるうちに小さくなって行く。この後お兄さんと2回くらいすれ違った。一体どのくらい上り下りしているんだろうか。

 

高千穂峰の最後の斜面は、本当に歩きにくかった。砂利が98%くらいで、あと2%は少し大きい石だ。砂利は踏んでも、後ろに下がり前になかなか進ませてくれない。石を足場にして進もうとするが、石の多くは砂利の上に転がっているだけで、踏むと砂利に流されていく。

 

ここが一番の難所かもしれない。下山時には疲れもあって3回ほど、尻を地面についた。

 

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10:40、何とか登りきった。お天気は曇りで、周りの景色は厚い雲の向こうだ。


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天の逆鉾が遠くに刺さっているのが、お分かりになるだろうか。とても不思議な感覚だ。昔ゲームにはまっていた頃に聖地巡りをしたことがあるが、それとは少し違う感覚だ。神話の世界、神々の世界にお邪魔しているような、神聖な感じがする。周りの景色が霧でよく見えなかったことが、その感覚を助長させるのかもしれない。

 


天の逆鉾


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裏から見た逆鉾。天狗の顔が彫ってあるそう。


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頂上にはトイレは無く、簡易トイレを使う小さな小屋があった。初めて簡易トイレを使用したが、凝固剤と混ぜている時の液体の温かさは何とも言えない。ベア・グリル氏が寒い場所でサバイバルする時には必ずこの液体を使って暖を取っていたのを思い出した。

 

頂上で少しのんびりお昼ご飯をきめたかったが、ソロ登山の女性が13時頃から雨になると教えてくれたので、軽く栄養補給した後、そうそうに下山した。

 

下山は高千穂峰の砂利でコケて苦しかったが、お鉢を歩きながら、岩場は岩に座りながら霧島山の景色を再び楽しむことができた。途中、コンビニ袋片手にスニーカー、普段着で岩場を登っている人がいたけど、こちらも大丈夫だっただろうか。

 

 

12:40、噴火もせず天気も崩れず、3回転んだけれど、無事に出発の鳥居まで戻ってこれた。

 

ビジターセンターの横でのんびりお昼を食べた。山頂には雲がかかっている。雨が降っているのかもしれない。

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どうか噴火してくれるなと思いながら登っていた。そしてここで噴火したらもうどうしようもないという無力感と死の感覚と素晴らしい噴火や火山活動が作る景観の美しさと生きているということが、どうしようもなく私を感動させる。

 

生と死は裏表なのだ。

 

いつもの生活で行き詰ったら、生きていることと死ぬことを同時に体感できる場所に行ってみるものいいのかもしれない。考えてみれば、サウナと水風呂もそういう感覚で入っているかもと今更ながら気が付いた。

 

 

ここまでお読みくださいまして、有難うございました。猛暑日が続いておりますが、何卒ご自愛くださいませ。