ぴこのねごと

さあ、つかの間の現実逃避へ。 旅とフラと時々経理の話

帳簿の記帳説明会 - 個人事業主達の祭り

サウナにて、今年のハロウィンの仮装はどうするかと普段はおとなしいけど騒ぎたい人や友達とわいわい騒ぎたい人達が一様にざわめく。今日もそんな話を自分の事の様に、心躍らせて聴いているリスナーの私だが、それはまた別の話。

 

今朝のニュースを見ると、若い子たちも仮装して街でめいっぱい騒いだ事が伺えた。伝統の祭りでも、輸入の祭りでも、我らは手を抜かない。抑圧された何かを解き放つ様に、魂が燃え尽きるまで騒ぐのだ!

 

そんな血煮えたぎるオレンジと黒のハロウィン世界から対極にあるような無味無臭で灰色の世界、それは税務署主催の「記帳説明会」かもしれない。今年は個人事業主元年という事で、初心に帰ろうと税務署主催の無料説明会に行ってみることにした。

 

お客様の経理を任せていただき、お金をいただいているので、今更感があるのだが、来年の消費税増税時の軽減税率制度の説明があるというので、何か情報の更新があるかと期待もしていた。

 

個人事業主と一言で言っても、最初に提出した届出書により、白色申告者と青色申告者に分かれる。簡単に言えば受けれられる特典が違うのだ。記帳説明会でのメインの説明はやはり青色申告である。青色申告は特典が多いので、その分帳簿の付け方が細かくなっている。配られた資料は、「帳簿の記帳のしかた」をメインのテキストとして、その他資料だ。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou03.pdf

 

内容は下記のような感じ。現金出納帳の他にも売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の書き方が順番に掲載されている。

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久々に簿記のテキストを読んでいる様だ。これを全く簿記が分からない人が理解するのはとても大変だなあと、説明を聞きながら資料を見ていると、案の定、説明している税務署のおじさん、田中さん(仮名)の声を遮るおじさんが現れた。

 

「すいません!」と、右斜めとなりに座っていたおじさんがおもむろに手を挙げた。よく見ると、3人がけのテーブルの真ん中の席に身体をななめにして座り、足を組んでスーツ姿で憮然と手を挙げている。

 

スーツおじさんは、自分の左の椅子にはカバンを置き、右の机の上には資料を置き、3人がけのテーブルを一人で陣取っている。満員電車でつり革を両手で1個ずつ、計2つ使うタイプの輩だなと勝手に判定する。

 

突然説明を妨げられた田中さんは、ちょっと咳込みながら、「うぇっほん、はい、何でしようか?」 と答えた。

 

「そのスライドの資料は渡されてない。スライドの下には33ページって書いてあるけど、もらった資料の何ページをやってるんですかね」

 

「ああ、ごほごほ、こちらのパワポの資料は皆さんが混乱するので渡してないんですよ」

 

スーツおじさんは、「テキストとスライドが違うから、よくわかんねぇよ」と誰に言うでもない小さな声で話し、ふっと電池が切れたように黙った。スーツのポケットに入れた上品そうな赤いスカーフが似合わない言動だ。静かになったのを見届けた後、田中さんは引き続き説明を続けた。

 

スーツおじさんの言う事も分かる。簿記の知識が全くない場合、青色申告の記帳方法を短時間で理解するのはとても難しい。田中さんはパワポの資料も配布するか、配布しないならテキストで説明すればいいのにとも思う。そして、お互いスライドでもパワポでもそこはいいじゃないか。

 

スーツおじさんはとても熱心で、その後も「少額とはいくらまでなのか」「固定資産はどんなものなのか」など熱心に質問していたが、理解できたのかは定かではない。

 

各帳簿の話が進み、個々の帳簿を手計算で集計する「月次総括集計表への移記」へと説明が進む。

 

田中さんは、「毎月、各帳簿の金額をこちらに集計すれば、申告の時にこれを足せばいいので、大変便利です。げほっ」と、少しだけ咳込みながらドヤ顔で言った。

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これは、簿記の美しい所でもあり醍醐味であるのだが、簿記の試験の時にしか、自分の手で電卓を叩いて帳簿を集計したことはない。手書きでの帳簿記帳、ハードルが高すぎる。会計システム万歳!私は、いい時代に生まれた。

 

スーツおじさんをチラ見すると 、おじさんは「無」になり、空(くう)を見つめていたように思えた。この後、田中さんから案内があり、帳簿記帳についての説明を無料で別途みっちりやってくれる機会があると説明があったので、希望の光がスーツおじさんの目に宿ったかもしれない。

 

青色申告会では、「会計システム」を利用した説明会もあり、商工会議所では「帳簿等を会場に持参し、受講者の実際の取引に基づいた記帳の仕方について、個別指導」もしてくれるそうだ。

 

肝心の消費税の軽減税率については既出の情報のみであったが、「青色申告特別控除の改正」について偶然知る事ができた。2020年からは、所得から控除できる金額が65万から55万円に引き下げられるそう。ただし、e-tax(電子申告)するか電子帳簿保存をしていれば、引き続き65万円の控除がうけられるという。いずれも事前の手続きが必要なので、準備が必要だ。

 

電子申告しなかった場合の税額インパクトは、10%の税率の人で、所得税10,000円、住民税10,000円の増税になるようだ。

 

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日々の経理業務に邁進し過ぎて、税務から遠ざかっていたので、この改正は本当に聞いてよかったのだが、私には「トリック オア トリート、e-taxしないと増税するぞ、」と咳込みながら言う田中さんの声が、最後に聞こえた気がしたのだった。

 

 

 

特に何もせずに、ハロウィンも終わってしまったけれど、皆様、明日も良い一日を。

 

今週のお題「ハロウィン」