サウナな人々 - 類は何を呼ぶのか
サウナ、ほの暗く汗ほとばしる空間。
今日もまたそこで、女子たちのよもやま話に花が咲き、熱風が吹き荒れる。
「その人、本当にことわざ知らないのよ」
品のいい見た目のおばあさん、これまでの話ぶりだと70歳は超えているらしい。サウナ常連さんで、この日のこの時間には必ずいる。
話し相手は、これまた常連さんのおばさん。話好きで、どんな話にもついてきて、一定の理解を示してくれるが、本当にそう思っているかは不明だ。
「その人、"類は友を呼ぶ"って言うのよ。私、えっ!て思ったのよ。類は友なんか呼ばないわよね。"類は類を呼ぶ"のよ。友なんか呼ばないわ」
90度の中での熱い主張。つーっと汗が私の背中を流れる。
「それで納得してくれたの?」
「全然納得してくれなくて、辞書で調べて、私が合ってるからと言ったのよ。そしたらなんて言ったと思う?」
「なんて言ったの?」
「2つの言い方があるのかもしれないわね、と言ったのよ。信じられない、本当に日本語知らないのね」
おばあさんは、相手の反応が気に入らなかったらしく、イラついた様に言った。
それだけで使うんだったら、類は"友"を呼ぶだと思うけど、と暑さでぼんやりした頭で思い、ひとり突っ込んだ。顔面から汗がポタポタ落ちる。
それにしても話し相手は、多分正解を知っていたと思うが、そこは敢えて突っ込まず、のらりくらり相槌を打っていた。高等技術だと思った。
また非難されていた人も対立を避け、2つ言い方があるとして、お茶を濁した行為は大人だ。
サウナであなたが他の人を聞いている時、また他の人もあなたを聞いているのだ。
またヘルシンキのサウナ、ロウリュに行きたいな。