雨の日に座るもの
駅前に止まっている自転車。変わった様子に目にとまるものがある。
大きさは、折りたたみ自転車サイズ。特徴的なのはその荷台部分だ。40センチ幅位のブルーのプラスチック板をアーチ状にし、その前と後ろにもプラスチック板を貼り付けた、中が見えない青いビニールハウスの様なものが荷台部分に取り付けてある。
とても不思議ではあったのだが、荷台の荷物が濡れない様に、そのハウスをつけたんたろうなとぼんやりと思っていた。
とても目立つため、駅前に止まっているとついつい目にとまり、持ち主はどんな人だろうと考えてしまう。
そんなある日、今日みたいなしとしと雨の夜、へとへとな私は最寄駅で降りると、その自転車が止まっているのを見つけた。
よく出来た外装だなと飽きずに眺めていると、
地面から30センチほどの外装の隙間に
ほっそりとした足が二本
見えるではないか。
小さな足、靴下と先端が丸い靴を履いた誰かが座っている。子供の様で、何だか乾燥した様な肌感は老人の様にも見える。
駅前の帰路につく人々の流れに逆らうことも出来ず、横目で自転車とそこにいる誰かを見ながら、疑問は頭の中でぐるぐると回り、大した情報も得られず、思考は止まった。
それ以来、自転車が止まっていても足は見えない。もう一度見たい、確認したいといつも思っているのだが。