とある日のラッシュアワー
朝のラッシュでぎゅうぎゅう詰めの車内。
開くドア側のドアの前に陣取ったカップルが
おりました。
彼氏は左手につり革、右手に彼女を抱きかかえ
必死に混雑から彼女を守っています。
運悪く、次は乗換えで乗車、下車が多い駅。
駅に電車が到着するとすごい勢いで、
車内に圧縮されていた人々が外に吐き出されます。
その人の流れに流れないように、
車内に踏ん張る彼氏と
そんな彼にしっかり抱きついてる彼女、
そんな健気な二人に容赦なくぶつかり下車する人々。
乗り込む人々の波にも耐えて、
またぎゅうぎゅうの詰めの車内で二人抱き合います。
しばらく同じ側のドアが開閉するので、
同じ事を何度も繰り返したと思います。
私は途中で下車してしまったので、
その後二人がどうなったのかは分かりません。
それから数ヶ月、まだあの二人が付き合ってるのか、
それとも別れてしまったのかわかりませんが、
あの時確かに、あの二人の世界には
あの二人しかいなかった。
すごい奇跡の瞬間に立ち会えたのかもしれません。
ものすごく邪魔だったけど。
いちいち乗り降りすればいいじゃないかとも
思ったけど。
ひつじ